『小さなよっつの雪だるま』/長谷川集平の新境地
●≪『小さなよっつの雪だるま』/ポプラ社≫
*
日曜日 ―。
*
91歳になる叔父の見舞いに行って来ました。 食欲もあり、元気そうで何よりでしたが、 すでにぼくが何者であるのかを、認知することは出来ません。
一家の長であるこの叔父に、 訊いておきたかったこと、話してみたいことなどが ぼくにはたくさんあります・・・・・・。
* ・・・・・帰る際にはいつも叔父の手を握ります。
*
1階の病室の窓からは、 赤く色づいた南天の実が見えました。
* * *
*
先月より探していた長谷川集平さんの 「新作絵本」を、国道2号線沿いの大型書店で ようやく見つけることが出来ました。
*
児童書コーナーの「クリスマス絵本」に囲まれて、 何やら遠慮がちに一冊だけ置いてありました。
*
タイトルは、『小さなよっつの雪だるま』(ポプラ社)。
*
思っていたよりも、ずっと小さなサイズの絵本。 そのためか、帯のコピーが目に飛び込んで来ます。
*
「生きていることの幸せや、
命をつないでいくことの尊さを、
やさしく静かに語る、
長谷川集平の新境地」
*
*
今回の作品の内容を短く、見事に伝える言葉です 。
*
長谷川集平さんは、絵本作家として30数年の キャリアがあります。 それ故、この「新境地」という言葉には説得力というか、 時間のもつ信頼感のようなものを感じさせます。
*
一昨年、京都在住で、画家として幅広く活躍をされている 男性の方とお話しする機会がありました。
*
長谷川集平さんと同年齢・同じ美術学校のご出身。 そのことをお訊ねすると、「“あの本”が出たときはビックリして、 本屋に並んで買いましたよ」と、1976年に『はせがわくんきらいや』が 発表された当時の美大生の様子などを話して下さいました。
*
* * *
長崎に暮らす小学生の女の子が成長し、京都の美術学校に進みます。 やがて男の子の母となった彼女は、京都に暮らしながら自分の子供時代や 家族のこと、ふるさとの情景に思いをはせる身となります。 そして、『小さな絵本』をつむぎ始めます―。
*
絵本の中ほど。長崎港から五島(列島)へと向かうフェリーが 大きく描かれている場面が登場します。 (ぼくがもっとも気に入った画面です。)
すこし目の粗い紙の上に、鉛筆の濃淡を用いて描かれた モノトーンの情景が印象的です。
この場面を境に、主人公である女の子の人生も 大きく動き始めるのです。
*
おそらく、『小さなよっつの雪だるま』を手にとって “ビックリ”する読者はいないでしょう。 (かっての美大生たちのように。)
むしろ本作で描かれているのは、 京都・清水寺で「絆」と露骨に揮毫されてしまった “今年の流行語”よりもはかなく尊い、小さなもの。
30数年間、絵本を贈り続けてきた「ひとりの作家」のみが “やさしく静かに語る”ことが出来る「新境地」です。
*
探してみて下さい。
*
●≪長崎・神ノ島にて≫
*
* (2011/12/14)
